楽譜は、
カプースチン
「ピアノアルバム 1」
(プリズム版) 66ページ〜71ページ
まず、<提示部>からです。
【A1】 1〜8(8)<第1主題 1>
| G | C/G C♯dim/G | G | G7 |
| C7 | G | Am7(♭5) D7(4) D7 | G |
<1〜3小節目>
最初の1〜3小節目までのコード進行は、
本来なら以下のようになります。
| G G7/B | C C♯dim | G/D |〜
ジャズで必ず使われる誰でも知っている進行です。
ベースが「ソ、シ、ド、♯ド、レ」
というラインを弾きます。
ところが「ソナティナ」では、
メロディーに以下のラインがきていますね。
|ソ、シ|ド、♯ド|レ|
これでは、ベース・ラインと重複するので、
私はベースを「G」のペダルにして〜
| G | C/G C♯dim/G | G |
というコード進行を書きました。
ちょうど左手メロディーに出て来る「ソ」の音が
低音で「Gペダル」のように聞こえなくもない?
ですから、
これは私のアレンジになってしまうかもしれません。
わたしは、
ジャズのピアノ・トリオ(ピアノ、ベース、ドラムス)で
演奏した時のことを想定して「G」のペダルにしたのです。
次の話は、逆説的になりますが、
「メロディーとベースをあえて重複させてもいい」
という考えもあります。
(人によって、または時と場合によって違います)
そうすると、この3小節の正しい分析としては
見たままを、そのまま書くなら
| G | C C♯dim | G |
または、
| G G/B | C C♯dim | G/D |
これが典型的なコード進行ですから、
ベースと重複しても、これが1番良いかもしれません。
(「G」ペダルにするか、悩むところですが)
1小節目の「G/B」は、
普通なら「G7」がよく使われますが、
カプースチンは意図的に使いませんでした。
なぜ?
次の4小節目で登場させる「G7」を
効果的に聴かすために、あえて封印したのです。
それで
1小節目には「ファ=♭7」がありませんので
「G/B」になります。
3小節目「G/D」のベースは指定されていませんが、
前の小節でベースが「C(ド)→C♯(♯ド」と来れば
次は必然的に「D(レ)」に行くことになりますので
「G/D」と書くのですね。
ついでに「アレンジの話」になってしまいますが、
| G | Am7 A♯dim | G/B | でも合いますし、
さらに
| G Em7 | Am7 A♯dim | G/B | でも合いますよ。
この2つのコード進行だとメロディーと重複しないで、
同じような効果があります。弾いてみて下さいね。
☆
たった3小節にコードネームを書くだけなのですが
こうやって遊ぶと楽しくありませんか。
「どれを選ぶか」は、実際に弾いてみて、
あなたが1番いいと思うコード進行を書き込んで下さい。
あるいは、全部書いておいて、同じメロディーでも
いろいろなコード進行が付けられることを学んで下さい。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
<4小節目>
ここは、メロディーに「♯ファ、ソ」しかありませんね。
「♯ファ」なのだから、コードは「GM7」では?
と思った人がいるかもしれませんね。
ここは完全に「G7」なんですよ。
なぜ、わかるのか?
前小節(3小節目)最後の音を見て下さい。
右手の「ファ」だけでもわかるのに、さらに
左手に「シ」まで書いてくれていますよね。
ジャズでは、次の小節の音を半拍前に出すのは常識。
分析する時、その小節内のすべての音を調べると同時に
前後の小節の音も調べることがすごく大切なのです。
この4小節目の場合を例にすると、
前の小節にある最後の「シ、ファ」は「G7」の「三全音」。
さらに次の小節(5小節目)に「C7」があるので、
その「C7」に行くための「G7」なのです。
ですから4小節目のメロディー「♯ファ」は、
「ソ」に解決している装飾的な音(アプローチ・ノート)です。
以上の理由で、この小節は「G7」であることが確定します。
<小節内の音と前後の小節からコードを判断すること>
ぜひ覚えておいて下さい。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
<5小節目>
「C7」=下から「♭7,9,3、5」
ジャズでは、ごく普通に使います。
<6小節目>
「G」=下から「3,5,6,1」
ジャズでは「♭7コード」でない限り、
「G」と書いてあったら
「6」や「M7」を入れるのは当前です。
この小節で注目すべきは
4拍目の「Am7(♭5)」ですね。
<7小節目>
次の小節のコードを半拍前に出すことを説明しましたが、
ここでは「1拍前」に使っています。
「このコード<Am7>じゃないの?」
と思う人がいるかもしれませんが、
右手メロディーに「♭ミ」がありますよね。
左手コード「ラ、ド、ソ」と、
右手メロディー「♭ミ」を合計すると
「ラ、ド、♭ミ、ソ」で
「Am7(♭5)」が確定するのです。
この7小節目の「レ、ソ」は?
クラシックでよく出て来るドミナント「D7」の前に置く
「G/D」(つまり「G」)では?と思った人いますか?
これは左手「レ、ソ」、右手「ラ、ド」を合計すると、
「レ、ソ、ラ、ド」で「D7(sus4)」に確定されます。
ここは位置的にトニックの前ですからドミナント。
次にある「ド、♯ファ」が本当の「D7」です。
<8小節目>
この小節はコードがないように見えますが、
よ〜く見るとありますよね?
前小節の4拍目裏「シ、レ、ミ」が「G」です。
「半拍前に出すのは当然」という話しましたよね。
押さえ方は6小節目の「G」と同じですが、
右手メロディーで「ソ」を弾くので、
左手は下の3声だけ弾けばいいのです。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
疲れましたか?
この8小節のコード進行について
まだ言うことがあるのですが、もうやめましょう。
最後に、少しだけメロディーについて。
4小節目の「♯ファ、ソ」を3回、5小節目も同じ。
そして、6小節目も同じように…と思わせておいて、
2回しかやらない。そして、すぐ「レ、♭ミ」2回に…。
これも、最近話しました「カプースチン・マジック」。
同じものを2回聴かせておいて、
「次もやるよ」と見せ掛けて途中でころっと裏切る。
コード進行、メロディー、リズム、あらゆるところで
カプースチンはワナを仕掛けてくるんですね。
それに、コロッと騙されてしまうのも、また快感で、
カプースチン音楽の変則的楽しみ方なんですよ!
いつも騙されて喜んでいるテル先生って、
「ちょっと変…?」