2008年09月26日

「24の前奏曲」第23番(徹底分析)

カプースチン(KAPUSTIN)
「24のプレリュード 作品53」(全音版)
 または
「ピアノアルバム 2」(プリズム版)

「第23番」徹底分析(解説1)

1小節ずつ解説していきます。

まずは、1コーラス目(1〜36小節まで)の解説。
大変に長くなってしまいました。(力作ですよ!)

これを読めば、ジャズの秘密である
テンション・コードの積み重ね方、
コード進行、アドリブ技法など、
いろいろなことがわかってしまいます。

<全体の構成>と<コード進行>を
以下を参考にして、楽譜に書き込んで下さい。

    ☆

<全体の構成>

<1コーラス目> (1〜36)
[ A 1]  1〜8   (8)
[ A 2]  9〜16  (8)
[ B ]  17〜24  (8)
[ A 3]  25〜36 (12)

<2コーラス目> (37〜70)
[ A 1]  37〜44 (8)
[ A 2]  45〜52 (8)
[ B ]   53〜60 (8)
[ A 3]  61〜70 (10)

Coda 71〜74 (4)

            ☆

それでは<1コーラス目>[ A 1] 1〜8から始めましょう。
8小節のコード進行は、すでに書き込んでいますよね。

[ A 1] 1〜8
|| FM7 | Cm7 F7 | B♭M7 | B♭m7 E♭7 |

| F(Bass C) / Am7 A♭7 | Gm7 | A♭M7 D♭M7 | G♭M7 ||

[ 1 ] FM7
右手(ド、ミ、ラ=5、7,3)の「ミ」がM7(メジャー7th)です。

次のコード、3拍目の裏拍は「Gm」。
トニック・コード「F」のメロディーに第4音が来た時、
「B♭」や「Gm7」(サブ・ドミ系)のコードを弾きます。
 と言うことは、
メロディー(ラー♭シーラ)に対して、普通なら、
「F」(ドファラ)「B♭」(レファ♭シ)「F」(ドファラ)
というコードを弾いてもいいのです。
しかし、これでは内声(上から2番目の音)が(ファファファ)
と同じ音の繰り返しになってしまいます。
そこで
「Am」(ドミラ)「Gm」(レソ♭シ)「F」(ドファラ)
のようにコードを弾くと、
内声が(ミソファ)になってメロディーらしくなります。
細かいことですが、ここが凡人とは違うのですね。

[ 2 ] Cm7 F7
「Cm7」
左手(ド、♭シ=1,♭7)
右手(♭ミ、ソ、レ=♭3,5,9)
この押さえ方はよく使いますので、
移調して12のコードで弾けるようにしましょう。

「F7」
左手(ファ、ラ=1,3)
右手(♭ミ、♭ソ、ド=♭7,♭9,5)
「♭ソ 」 は 「♭9th 」です。

[ 3 ] B♭M7
コードを1拍分、前の小節の4拍目に出して弾いていますね。
ジャズでは(カプースチンも)よくやります。
左手(♭シ、ファ=1,5)
右手(ラ、ド、レ、ファ=M7,9,3,5)

[ 4 ] B♭m7 E♭7
2拍目のコードが「B♭m7」です。
左手(♭シ、♭ラ=1,♭7)
右手(♭レ、ファ、♭シ=♭3,5,1)

1拍目の左手に「ラ」がありますね。
これは正式に書くと「B♭mM7」ですが、この「ラ」は
2拍目「B♭m7」の「♭ラ」へ行く装飾的な音。
本来のコード機能を、はっきりさせない目的で使用します。
カプースチンは、この様なことを多用します。

「 E♭7 」
左手(♭ミ=1)
右手(ソ、♭シ、♭レ、ファ=3,5,♭7,9)

♪ここまで(1〜4小節)のコード進行、
ジャズの名曲「ミスティ」と同じですね。
作曲者は、エロール・ガーナー。ジャズでよく使う進行です。

[ 5 ] F ( Bass C ) / Am7 A♭7
コード「 F 」の第5音=「ド」がベース音になっています。
右手は、メロディーが「♯ソ、ラ」ですので、
半音下のコード「 E 」から「 F 」に3声で解決させています。
1小節目「Gm」のように、この「E」も装飾的なコードです。

「Am7」は、本来は3拍目にあるのですが半拍前で弾いています。

「A♭7」は「D7」の代理コードです。
本来4拍目ですが半拍前で弾いています。
右手1番上の音「レ」は「♯11th」です。

[ 6 ] Gm7
また1拍分を前の小節に出していますね。(3小節目と同じ)
メロディーの「♭ラ」は、
「F」のキーの第3音「ラ」を意図的に半音下げて
ジャズらしいフィーリングを出しています。(ブルーノート)

[ 7 ] A♭M7 D♭M7
7〜8小節のメロディーは「ファ」ですので、
普通ならコードも「F」でいいのです。
しかし、9小節目に「F」のコードがあるので、
その前の2小節は偽終止(ぎしゅうし)を使ったのです。
A♭M7
左手(ラ=1)
右手(ソ、ド、ファ=M7,3,6)

D♭M7
左手(レ=1)
右手(ファ、ド、ファ=3、M7,3)

「M7コード」での4度進行です。
(A♭から4度上のD♭、さらに4度上のG♭へ)

[ 8 ] G♭M7
G♭M7
左手(♭ソ、♭レ=1,5)
右手(ファ、♭シ、♭ミ=M7,3,6)

左手の8分音符で動くフレーズがありますね。
コード・トーン(♭レ=5、♭ソ=1)を丸で囲って下さい。
これ以外の音は、全部装飾的な音です。
「♭ミ、ド」は上下から「♭レ」へ、
「♭ラ、ソ」は半音が2つ下行して「♭ソ」へ、
「ド」は半音下から「♭レ」へ、それぞれ解決していますね。
この様に、フレーズは
「どれがコード・トーンで」
「どれが装飾音か」を分析すると
分かり易くて、覚え易くもなります。

===============

[ A 2] 9〜16 に進みましょう。

[ A 2] 9〜16
|| FM7 | Cm7 F7 | B♭M7 | B♭m7 * E♭7 |←ミスプリント

| D♭7 / F (Bass C) A♭7 | G7 | G♭M7 | FM7 ||

*12小節目、3拍目、左手の最下音「E」は、ミスプリント。
「E♭」にする。(4,28,64小節と比較してみよう)。

*13小節目、2拍目の裏、以前は「C」と書きましたが、
「F ( Bass C )」 にして下さい。

[ 9 ]〜[ 11 ] は [ 1]〜[ 3] と同じですので省略します。

[ 12 ] B♭m7 E♭7
「B♭m7」
左手(♭シ、♭ラ=1、♭7)
右手(♭レ、ド=♭3、9)
[ 4 ] では左手の1拍目に「ラ」がありましたが、
ここでは「♭ラ」を最初から使っています。

「E♭7」(左手の「ミ」は、ミスプリント。♭を付ける)
左手(♭ミ、♭シ、ソ=1、5、3)
右手(♭レ、ファ、♭シ=♭7、9、5)
左手が2拍目で「ソ」を弾いた所から「E♭7」です。
[ 12 ] と [ 4 ] を、よく比べて下さい。
「 4 」では、4拍目が「E♭7」です。
(3拍目は、2拍目の「♭ラ」が、まだ残っています)。
[ 4 ] を正確に書くと、1拍ずつ次のようになります。
| B♭m(M7)、B♭m7、E♭7( sus4 )、E♭7 |
ツーファイブの装飾です。

[ 13 ] D♭7 F( Bass C ) A♭7
「D♭7」(1拍半)
左手(♭レ、ファ、シ=1、3、♭7)
右手(♭ミ=9)

「F ( Bass C )」(2拍目の裏)
左手(ド、ラ=5、3)
右手(レ、ミ、ソ=6、M7、9)

「A♭7」(3拍目の裏)
左手(♭ラ、♭ソ=1、♭7)
右手(ド、ファ=3、13)

[ 14 ] G7
1拍分、前の小節に出した時点では「Gm7」に見えますが、
この小節 [ 14 ] の1拍目、左手に「シ」がありますので「G7」です。
「G7」
左手(ソ、ファ、シ=1、♭7、3)
右手(ファ、♭シ、レ=♭7、♯9、5)
[ 6 ] では「Gm7」でしたが、ここでは「G7」。
メロディーの「♭ラ 」は、 [ 6 ] で説明したブルーノート。

[ 15 ] G♭M7
「G♭M7」
左手(♭ソ、♭レ=1、5)
右手(ファ、♭シ、♭ミ=M7、3、6)
右手のフレーズで使われているスケールは、
F マイナー・ペンタトニック・スケール。
(ファ、♭ラ、♭シ、ド、♭ミ)。

コードとしては、
「 G♭M7 」の上に「 A♭」が乗っている分数コード、
分母「 G♭M7 」、分子「 A♭ 」です。
このコード(分母、分子の両方)が半音下がると、
次の小節のコードになります。

[ 16 ] FM7
「FM7」
左手(ファ、ミ、ラ=1、M7、3)
右手(レ、ソ、シ=6、9、♯11)
右手のコードは「G」の第2転回形。
分数コード=分母「FM7」、分子「G」

左手(低音の)フレーズ、
「ファ」(1)、「ド」(5)がコードトーン。
「シ、♭レ」は半音下と上から「ド」に、
「レ」は半音下から次の小節の「♭ミ」へ
解決する装飾的な音です。

==============

[ B ] 17〜24
| E♭m7 A♭7 | Fm7 B♭m7 | Bm7 / E7( B♭7) | AM7 Bm7 Cm7 C♯m7 |

| Dm7 G7 |Em7 Am7 | A♭m7 D♭7 | Gm7 C7 ||

[ 17 ] E♭m7 A♭7
この小節から「キーD♭」に転調しています。
「Um7  X7」(ツー・ファイヴ)です。
「E♭m7=Um7」
「A♭7=X7」

[ 18 ] Fm7 B♭m7
この小節は、本来なら「D♭M7」です。
前の小節から「Um7 X7 T」(ツー・ファイヴ・ワン)で
「キーD♭」に転調しているからです。
しかし、
ここでは「トニック(D♭M7)の代理」(Vm7、Ym7)を
2つ使って4度進行にしています。
「Fm7=Vm7」
「B♭m7=Ym7」

[ 19 ] Bm7 E7( B♭7)
この小節から「キーA 」に転調。
「Bm7=Um7」
「E7=X7」
(B♭7)=(U♭7) は、「E7」の代理コード。

[ 20 ] AM7 (Bm7 Cm7 C♯m7)
[ 19 ]〜[ 20 ] は 「キーA 」ですね。
「ツー・ファイヴ・ワン」ですから、
この小節は「AM7」だけでいいのです。
2拍目からのコードは装飾的なもの。
次の小節が「Dm7」ですので、ベース音「D」に向かって
「AM7」のベース音を「ラ、シ、ド、♯ド」と設定。
そして、普通なら単音のベース音に、
すべてコードを付けると、このようになるのです。
「AM7 Bm7 Cm7 C♯m7」

[ 21 ] Dm7 G7
ここから「キーC」の「Um7 X7」(ツー・ファイヴ)
「Dm7=Um7」
「G7=X7」

[ 22 ] Em7 Am7
この小節の本来のコードは?
もう、わかりますよね。
前の小節から「Um7 X7 T」ですから、
「CM7」ですね。前の小節から「キーC」に転調しています。
しかし、[ 18 ] と同じで
「トニック(CM7)の代理」(Vm7、Ym7)を
2つ使って4度進行にしています。
「Em7=Vm7」
「Am7=Ym7」

♪ここが「CM7」だなんて信じられない人は、
2コーラス目の同じ小節を見て下さい。[ 58 ] です。
1拍目の左手、完全に「CM7」ですよね。

♪[ 17〜18 ]のメロディーとコード進行が半音下がって
 [ 21〜22 ]になっています。少し変奏していますが。

♪[ 18 ]のB♭m7が半音「上がって」
次の小節[ 19 ]のBm7に進行したのに対して、
この小節[ 22 ]のAm7は半音「下がって」
次の小節[ 23 ]のA♭m7に進行しています。

[ 23 ] A♭m7 D♭7
次の小節にある「C7」に行くためのコード「G7」。
その「G7」の代理コードが「D♭7」。
その「D♭7」を「Um7 X7」にすると、
「A♭m7 D♭7」になります。
この「Um7 X7」が半音下がると
次の小節のコード進行になります。

♪この小節のメロディーは、[ 17 ]、[ 21 ]と
同じモチーフが使われています。
(Um7で11th、X7で13thから5thへ)
「A♭m7」の「♭レ」が「11th」です。

「D♭7」
左手(ファ、♭ド、♭ミ=3,♭7,9)
右手(♭シ、♭ミ、ソ、♭シ=13,9,♯11,13)
分数コードです。分母「D♭7」、分子「E♭」(右手)

[ 24 ] Gm7 C7
「キーF」の「Um7 X7」
「Gm7=Um7」
「C7=X7」
これで無事に「キーF」に帰って来れました。
実に鮮やかな転調でしたね。

[ B ] の8小節をまとめると、2小節での転調です。
「D♭」→「A 」→「C」→(「F」)

ジャズ理論を学んだ人なら、この8小節はすごく覚え易いです。
すべて理論どおり、きれいなコード進行(4度進行中心)で
作曲されているからです。

これを、意味もわからずに丸暗記で弾こうとする人は、
何十倍もの時間を使うことになります。

ジャズ理論をよく知らない人でも、
この解説を何回も読んで勉強すれば、
何も知らない時よりも曲が覚え易いことを実感出来ると思います。

==============

[ A 3] 25〜36

|| FM7 | Cm7 F7 | B♭M7 | B♭m7 E♭7 |

| D♭7 *F(Bass C) | Bm7(♭5) | B♭m7 * A♭M7(♯5) | G7 |

| Dm7(♭5) D♭7 | C7(4) | C7(4) | C7(4) ||

*[ 29 ] 2つ目のコードを以前は「C」にしていましたが、
「F (Bass C)」に変更しました。

*[ 31 ] 2つ目のコードは、
各声部の流れの中で出来てしまったコード?
書かなくてもいいのですが、一応書いておきました。

          ☆

それでは、解説を続けます。

[ 25 ] FM7
1拍目の右手コード(レ、ミ、ソ、ラ、ド)は、
(6,M7,9,3,5)です。

メロディー「ラ、♭シ、ラ」は、[ 1 ]、[ 9 ]よりもオクターヴ上げて、
4音のコード(「FM7」と「Gm7」)で弾いています。
しかも両手で同じ押さえ方を弾いて厚いサウンドにしています。
([ 1 ]と[ 9 ]では、3音のコードでしたね)。

[ 26 ] Cm7 F7
「Cm7」は、
左手(♭シ、♭ミ、ソ=♭7,♭3,5)
右手(レ、ソ、♭シ、レ=9,5,♭7,9)
分数コード(分母「Cm7」、分子「Gm」)

1拍目はベース音がありません。
もし、2拍目の「ファ」が1拍目からあると
「Cm7(Bass F)」または「F7(sus4)」になります。
[ 1 ]、[ 9 ]の「Cm7」も同じように解釈出来ます。
1拍目の裏、ベース「ド」を「F7」の第5音と解釈する。

「F7」の「♭ソ」は「♭9」です。

[ 27 ] B♭M7
右手コードは1拍分、前の小節に出しています。
(レ、ラ、ド、ファ=3,M7,9,5)

メロディー(ファ、ソ、ファ)に対して
「ソ、ド、ファ=6,9,5」
「ラ、レ、ソ=M7,3,6」の4度和声。

[ 28 ] B♭m7 E♭7
[ 12 ]と、ほとんど同じです。
1拍目の右手に「ファ」があるか、ないかの違いですね。

[ 29 ] D♭7 F(Bass C)
以前2つ目のコードを「C」としましたが、
「F (Bass C)」に変更します。

この小節 [ 29 ]と[ 13 ]との違いを比べましょう。

[ 13 ] では4拍目に「G7」があったので、
その前に「A♭7」を使いました。
しかし今回[ 29 ]の4拍目は「Bm7(♭5)」なので、
ベース音が「♭レ、ド、シ」と半音で下行します。
3拍目の裏拍、メロディー「ファ」は、
「A♭7」を使う必要がなくなったので
単音だけになっています。

[ 30 ] Bm7(♭5)
[ 13 ]では「G7」でした。
「G7」のコードトーンに「9」を加えて(ソ、シ、レ、ファ、ラ)
ルートを省略すると(シ、レ、ファ、ラ)=Bm7(♭5)です。
この2つのコードは近い関係にあることがわかりますね。

[ 31 ] B♭m7 A♭M7(♯5)
B♭m7から短3度下のコードに行く時、
ベースに「♭7」を経過音として使うと
スムーズなベース・ラインになります。

| B♭m7 / B♭m7(Bass A♭) | G7 |

ベース・ライン(♭シ、♭ラ、ソ)に対して、
右手の内声も並行して(♭レ、ド、次小節のシ)にする。
ベース「♭ラ」の上に「ド」を使った時点で考えられるコードは、
普通なら「A♭」または「A♭7」。
しかし、メロディーに「ソ」があるので「A♭M7」
さらに下から2声目は、「G7」の「♭7=ファ」に
半音下から解決するための「ミ」。
「A♭」から見ると「ミ」は「♯5」ですので、
これらの音を合計して、無理やりコードネームにすると
「A♭M7(♯5)」になってしまうのです。
各声部の流れ(横)を考えて作ったところを
コード(縦)で見るから無理がある。
ここは各声部の横の流れで覚えましょう。

[ 32 ] G7
[ 30]と同じフレーズですが「ラ」だけ「♭ラ」。
[ 14 ]と同じブルーノートです。

[ 33 ] Dm7(♭5) D♭7
メロディーは[ 29 ]と[ 31 ]のモチーフですが、
最初の2音を変えています。
なぜでしょう?
前の小節[ 32 ]の最後の3音が「♭ラ、ソ、ファ」なので
同じ音の繰り返しを避けた。(3回目のモチーフ使用でもあるから)。

コードは、前の小節から「G7」が2小節続いているのですが、
この小節だけ「Um7 X7=Dm7 G7 」に分割したのです。
そして「Dm7」は、メロディーに「♭ラ」があるので
「Dm7(♭5)」にします。

「G7」は、メロディーが「ソ」(ルート)の時に使うと
ベース音も「ソ」になり重複します。
このような時は、代理コード「D♭7」を使います。
そうすると、メロディー音「ソ」が「♯11」になり、
ジャズサウンドの度合いが増すからです。

[ 34 ] C7(sus4)
この小節から3小節は同じコードです。

右手で「B♭」のコードを弾いていますね。
「B♭(Bass C)」と書いても同じコードです。

この3小節で使われている音は、
「C ミクソ・リディアン」の第3音を省略したスケール。
「ド、レ、ファ、ソ、ラ、♭シ」
このスケール(6音)をコードにすると、
下から「ド、ソ、♭シ、レ、ファ、ラ」=B♭M7(Bass C)=C7(sus4)

[ 35 ] C7(sus4)
左手コード(ド、ファ、♭シ、レ=1,4,♭7,9)

[ 36 ] C7(sus4)
メロディー「♯ソ」は臨時の装飾な音で、
次の「ラ」に半音下から解決しています。

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カプースチン
「24のプレリュード 作品53」(全音版)

「第23番」徹底分析(解説2)

ここからは
<2コーラス目>[ A1]37〜44小節の解説です。

8小節のコード進行は、すでに書き込んでいますよね。
まだの方は、以前の記事を参考にして下さい。
1コーラス目も学んでから、この続きを読んで下さい。

それでは始めましょう。

<2コーラス目>

[ A1]37〜44
|| F(Bass A) A♭dim G dim F | Cm7 C♭7 |

| B♭M7 Cm7 C♯m7 Dm7 | E♭7(4) E♭7 |

| C7 /F7 C♭7 |B♭7 A7 | A♭m7 D♭7 | Gm7 / C7 G♭7 ||

            ☆

[ 37 ] F(Bass A) /A♭dim / Gdim / F
本来は「FM7」が1つの小節。(1コーラス目[ 1 ]を参照)。
1拍目と4拍目のコードは「 F 」 です。
ベース音は「F」の第3音「ラ」から始まり、
4拍目の「ファ」(ルート)に向かって
経過音(♭ラ、ソ)を使っています。
このベース・ライン(ラ、♭ラ、ソ、ファ)は、
[ 20 ] AM7 のベース・ラインの逆ですよね。
分かり易くするために「AM7」のベース音を
「FM7」に移調しますと「ファ、ソ、♭ラ(♯ソ)、ラ」。
このラインを逆から読むと「ラ、♭ラ、ソ、ファ」。

本来1つしかコードがない場合に、ベースを設定し、
各音の上にコードを付け変化させているのです。

2〜3拍目は、装飾的なコード。

まず、3拍目から先に考えます。
「 G dim 」 は 正確に書くと「C7(Bass G)」です。
「 F 」 に解決する「ドミナント」。
ルート(C=ド)はありませんが、ミ=3、♭シ=♭7が
「C7」の機能を証明する「三全音」です。

次に2拍目のコードは、3拍目「C7」へ行くための「G7」。
その代理「D♭7」と考えてもいいです。
各声部が半音上から「C7」に解決していますから、
半音上のコードは「D♭7」と単純に考えてもいいです。

2〜3拍目を正確に書くと
D♭7(Bass A♭)   C7(Bass G)
になりますが、複雑になります。
そこで、ベース音をコードのルートと解釈して
「A♭dim」と「Gdim」で書いたのです。
頭のなかで機能は「G7→C7→F」と
理解していればいいのです。

[ 38 ] Cm7  C♭7
「F7」の代理で「C♭7=(B7)」が使われています。

[ 39 ] B♭M7 / Cm7 / C♯m7 / Dm7
本来は「B♭M7」だけです。1コーラス目[ 3 ]参照。
[ 20 ] と比べて下さい。同じですよね。
2〜4拍目は装飾的なコードです。

[ 40 ] E♭7(4)  E♭7
1コーラス目[ 4 ] ではベース音「♭シ=B♭m7」でしたが、
ここではベースに「♭ミ」を使っていますので、
コードは「E♭7( sus 4)」( sus は省略していますが)。
「D♭ ( Bass E♭ ) 」と書いてもいいです。

[ 41 ] C7 / F7 C♭7
1拍目は第1転回形なので「ミ」が1番下ですね。
これは前の小節が「♭ミ」ですので半音上がって
スムーズに進行させるためです。
4拍目「 C♭7 」 は 「 F7 」の代理コード。

[ 42 ] B♭7 A7
「 A7 」 は「 E♭7 」の代理です。
[ 41]〜[43] のコード(ルート)は、
完全4度進行です。
( C、F、B♭、E♭、A♭、D♭)
「E♭7」に代理を使いましたので、
その前後は半音下行になります。
(B♭→A→A♭)

[ 43 ] A♭m7 D♭7
4拍目、最後の2音(レ、ラ)は、
次の小節「Gm7」の5,9です。

[ 44 ] Gm7 / C7 G♭7
4拍目「 G♭7 」 は 「 C7 」の代理コード。

  =============

カプースチン
「24のプレリュード 作品53」(全音版)

「第23番」徹底分析(解説3)

♪ここからは、
<2コーラス目>[ A 2] 45〜52の解説です。

[ A 2] 45〜52
|| FM7 | Cm7 C♭7 | B♭M7 | B♭m7 E♭7 |

| Am7(Bass D) D7 | G7 C7 | FM7 B7 | Em7 ||

             ☆

[ 45]  FM7
コードの構成音は下から「1,5,9,3,6」。
「F6」ですね。
私の習慣で「M7」の音がなくても、「F7」ではないという意味で
「FM7」と書いています。

右手2拍目(フレーズ)の「♭ラ=♭3」はブルーノート。
左手コードに「ラ=3」(ナチュラル)があっても、
フレーズは「♭ラ」を使いジャズっぽい感じを出しています。
同時に弾く上の音(レ)は「6」、下の音(ソ)は半音でぶつけて
不協和度を強調しています。
ジャズ・ピアニスト(ピーターソンなど)がよく使う奏法です。

[ 46] Cm7  C♭7
右手フレーズ最初の4音「ファ、ミ、レ、♭ミ」が重要。
上から半音2つ(ファ、ミ)で「♭ミ」に解決する音と
下から半音1つ(レ)で「♭ミ」に解決する音を組み合せて
「ファ、ミ、レ、♭ミ」。
別の言い方をすると、
「ファ、ミ」が解決するはずの「♭ミ」を通り越して
「レ」まで行ってから「♭ミ」へ戻って解決しています。

「C♭7」は「F7」の代理です。[ 41]でも使用しました。

[ 47]  B♭M7
右手3拍目の裏は、低音部記号の音域です。
注意して下さい。「ファ=5」ですよね。

[ 48]  B♭m7  E♭7
右手、低音部記号が続いています。
気を付けて下さい。

[ 49]  Am7(Bass D)  D7
1〜2拍目は「D7(sus4)」 または
「C(BassD)」と書いてもいいです。
3拍目の左手コード「3,♭7,9」は
ジャズで頻繁に使います。

[ 50]  G7  C7
3拍目は「C7(sus4)」ですが、一瞬です。
頭の中で理解していればよいので
(sus4)は書きませんでした。(書いてもいいです)
4拍目は「3、♭7,9」
前小節の3拍目「D7」と同じ構成音。

[ 51]  FM7  B7
1〜2拍目のフレーズ(♭ラ、ファ、レ、ド)は、
[ 45] 2〜3拍目と同じ。

「B7」は「Em7」へ行くためのドミナント。

[ 52]  Em7
次の小節が「E♭m7」ですので、
半音上「Em7」から進行する装飾的なコード。

==================

カプースチン
「24のプレリュード 作品53」(全音版)

第23番の徹底分析(解説4)

♪ここからは、
<2コーラス目>[ B ]53〜60の解説です。

[ B ] 53〜60
| E♭m7 A♭7 | Fm7 B♭m7 | Bm7 E7 | AM7 Bm7 Cm7 C♯m7 |

| Dm7 G7 | CM7 B♭7 / Am7 | A♭m7 D♭7 | C7 ||

           ☆

[ 53] E♭m7  A♭7
1拍目、右手は「B♭m」に見えますが
「E♭m7」の「9,5,♭7,9」。

3拍目、右手は「Am」に見えますが
「A♭7」の「♭13、♭9,3、♭13」。

右手の2拍目「Am」と、4拍目「G♯m」は
各声部が次の音に半音下から解決する装飾的コード。
コード進行ではありませんので書きません。

[ 54] Fm7  B♭m7
「Fm7」は要注意。特殊な音を使っています。
1拍目、右手は「E♭(♯5)」に見えますが、
「Fm7」の「♭7、9、♯11、♭7」
普通「Fm7」で「♯11」は使いませんが、
特殊なスケール(ドリアン♯4=♯11)などを
設定して使っているのでしょうね。
ファ、ソ、♭ラ、シ、ド、レ、♭ミ
(注、「シ」がナチュラル=♯11)
C の和声的短音階の第4音から弾くと
このスケールになります。

2拍目、右手は「D」(レ、♯ファ、ラ、レ)
に見えますが、コード(縦)で考えないで下さい。
「横の流れ」を見て下さい。
2〜3拍目、メロディーの1番上が「レ、♭ミ、ド」
上から2番目「ラ、シ、♭ラ」、
上から3番目「♯ファ、ソ、ファ(ナチュラル)」

3拍目「B♭m7」の右手は「Fm」に見えますが、
「9,5,♭7,9」

4拍目、右手の「Em」は、各声部が次の音へ
半音下から解決する装飾的なコード。
コード進行には関係ありません。

[ 55] Bm7  E7
この小節は<キーA> の「Um7 X7」

1拍目の「Bm7」は、
前小節「B♭m7」最後の両手コードが
半音上がって「Bm7」になっています。

3拍目、「E7」の右手メロディー、
♯ド=13、ド=♭13、ファ=♭9
これでコードの構成音もわかりますね。
残りの音はコードトーンですから。

4拍目、左手は「E7」の「♭7,3,♭13」

[ 56] AM7 Bm7 Cm7 C♯m7
「AM7」以外は装飾的なコード。[ 20] と同じ。

[ 57] Dm7  G7
2拍目、左手、下から「3,5,♭7,9」、
右手「11,♭7,9,11」。
4拍目、左手「♭7、♭9,3,13」

[ 58] CM7 B♭7  /  Am7
「B♭7」は、「Am7」に行くための「E7」の代理。

[ 59] A♭m7  D♭7
「D♭7」は、次の「C7」に行くための「G7」の代理。
その「D♭7」を「Um7 X7」にしています。

[ 60] C7
1拍目は「C7(sus4)」(1,4,♭7,9)です。
4拍目の「♭ソ」は「♭5」。
「G♭7」と考えてもいいです。
1拍目、4拍目共に一瞬ですので
コードネームには書きませんでした。
      
===================

カプースチン
「24のプレリュード 作品53」(全音版)

「第23番」徹底分析(解説5)

♪ここからは、
<2コーラス目>[ A3]61〜70と
[Coda]71〜74の最後までを解説。

[ A 3] 61〜70
|| FM7 | Cm7 F7 | B♭M7 | B♭m7 E♭7 |

| F(Bass C) / Am7 A♭7 | G7 | Am7 D7 | G7 |

| A♭M7 D♭M7 | G♭M7 ||

         ☆

[ 61] FM7
[ 62] Cm7 F7
[ 63] B♭M7
[ 64] B♭m7 E♭7
[ 65] F(Bass C) / Am7 A♭7

[ 61]〜[ 65] は、1コーラス目[ 1]〜[ 5] の再現。
ほとんど同じだが、違いは[ 62] 3拍目裏のベース音。
[ 2] と比べて「ファ」がオクターブ低い。
もう1つ、[ 65] 4拍目のコードが「G7」。
[ 5] では「Gm7」だった。

[ 66] G7
コードは「G7」ですが、
メロディーは「F」のブルーノートを使ったフレーズ。
♭ラ=♭3、♭ド=♭5

[ 67] Am7 D7
メロディーは「ファ」で終っているけれど、
コードは偽終止で「Am7」を使用。
次の「G7」に行くためのUm7 X7(Am7 D7)。

[ 68] G7
[ 66] とは違い「♭ラ」は使わずに「ラ」を使用。

[ 69] A♭M7 D♭M7
もう1つ別の偽終止。
この進行 [ 69] [ 70] は [ 7] [ 8] と同じ。

[ 70] G♭M7
4拍目裏のコードは「E7」。
半音下から「F」に解決するコード。
一瞬なのでコード進行には書きません。

Coda  71〜74
|| FM7 (4小節) ||
メロディーに使われている音は「F リディアン」。
「ファ、ソ、ラ、シ、ド、レ、ミ」
「1,9,3,♯11,5,6,M7」
以上の音を組合せて使っている。
これがわかれば自分で分析出来ます。
例えば、[ 73] 3拍目、「レ、ソ、シ、レ」は
コード「G」に見えますが、「F」から見ると
レ=6、ソ=9、シ=♯11、レ=6です。

この4小節すべての音を分析してみましょう。

             ☆

お疲れ様でした。
第23番、最後の小節まで解説しました。

ここに書いたことは、まだ3分の1程度でしょうか。
コードのことを中心に書きましたが、メロディーを1音1音
説明することも出来ますし、応用編もいろいろ書けます。

自分では当たり前のことを、この様に書き出す作業は
とても大変なことでした。読む方も大変だったと思います。

次の曲は、要点だけを書き出すか、どの様にするか、
よく考えようと思っています。
とにかく、やっと1曲。試行錯誤が続きます。
posted by テル先生 at 04:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 「24のプレリュード」op.53 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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